EDについて

EDとは

 EDは、英語の「Erectile Dysfunction」の略語で、訳すと「勃起の機能不全」となります。日本では「勃起障害」「勃起不全」と訳されますが、やはりEDのほうがスマートな感じがします。EDといっても、途中萎えや中折れから、まったく勃起しない状態まで様々です。
 最近調子が悪い、セックスの途中で中折れしてしまう・・・ などの症状を感じた時は、「ED」を疑われます。自己問診票を用意しましたのでセルフチェックしてみてください

勃起のメカニズム

 ~なぜ立たないのか?~
 それを知るには、なぜオトコは立つのか、それを知る必要があります。
 まずはオチンチンの構造ですが、左右の陰茎海綿体とその下にある1つの尿道海綿体というもので出来ています。オチンチンの断面図を失礼ながらドラえもんの顔に例えてみると、両目が左右の陰茎海綿体で、両目の下にある鼻が尿道海綿体、そんな位置関係です。このうち、勃起には陰茎海綿体のほうが重要です。
 勃起には神経と血管の働きが必要です。性的な刺激があると信号として大脳に送られ、さらに大脳から陰部の方へと送られます。すると副交感神経からNO(一酸化窒素)が放出されます。NOはcGMP(サイクリックGMP)とともに、陰茎海綿体そのものや海綿体の血管の壁の緊張をほぐす働きをします。その結果、陰茎海綿体へ血液が流入しやすくなり、陰茎海綿体に血液が充満してきて勃起が起こり始めます。血液の流入がすすみ陰茎海綿体がさらに膨らんでいくと、そのふくらみ自体が海綿体から血液の出て行く排出路を圧迫し、海綿体から出ていってしまう血液量を減らします。〈陰茎海綿体には血液が入ってきやすく、なおかつ血液がでていきにくい状態〉となるわけで、多くの血液が貯留し、陰茎海綿体の充血が維持され、勃起が完成するのです。
 PDE5という酵素があります。PDE5はcGMPをこわす作用があり、これにより勃起が消褪します。勃起を維持するためにはPDE5がないほうがよいわけです。つまりPDE5を減らす薬があれば勃起が強くなるーそれがPDE5阻害剤で、バイアグラ・レビトラ・シアリス(いずれも先発品の名前)といった薬剤があります。

NO;一酸化窒素。cGMPとくっついて血管拡張にはたらきます。
cGMP;サイクリックGMP。 Noとくっついて血管を拡張させます。
PDE5;cGMPをこわす酵素で勃起の邪魔となります。
PDE5阻害剤;邪魔者のPDE5を阻害するので、結果として勃起を促します。

EDの原因

1)心因性ED
 10代、20代、30代でも中折れや勃起障害に悩んでいる方はいらっしゃいます。特に持病もない健康体であるのにかかわらず、性行為になると調子が悪いパターンです。「マスターベーションでは良好なのに」、とおっしゃる方もいらっしゃいます。
 原因の多くはメンタル面です。仕事や家庭などのストレスや、性交がうまくいかなかったときのトラウマ、いい所を見せなきゃという圧迫感などの精神的ストレスが背景にあります。妻から妊活宣言され、排卵周期にあわせて夫婦の営みを(事務的?強制的?に)行うようになってから、という方もいます。お相手の方が放った「へたくそ」という言葉のストレートパンチでKOされ、立ち上がれない人もいます。いくら「立つんだジョー!」と焦って叫んでみても、ジョーはすでに廃人です。焦りが出てドツボです。ストレスはEDの一大要因なのです。
 このタイプは、神経や血管の異常がないことが多く、ED治療薬が奏功しやすいです。ためらわずにED治療薬をお試しください。高い確率で効果を表します。
 ただし、お気を付けいただきたいことがあります。結果を焦っては絶対だめです。ED治療薬を使用しても、あなたの思い描いている理想の状態・黄金時代になるわけではありません。ED治療薬という松葉づえを使ってのリハビリと思ってください。一歩一歩進む感じです。ストレスさえなければ、いずれ杖はいらなくなりますので、ご安心ください。同時にお相手にも状況の理解をしていただくなど、ストレスの軽減をできる範囲で行っていきましょう。

2)器質性ED
 血管や神経の病気が原因となって起きてしまうEDで、中高年からのEDに多いです。生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂質症など)が持病である方はもちろん、一見健康体でも、血管の老化にともないEDになったりもします。神経系の異常としては、糖尿病やパーキンソン病などのほか、脳出血や不慮の事故による脊髄の損傷、前立腺肥大や前立腺がんの一部の手術のように外部からの神経を傷つけるような外傷が原因となることもあります。持病のある方は、改善もしくは悪化しないように治療をしっかり行うことが大切です。
 ED治療薬の適応かどうかは、持病の状態や、全身の健康状態をチェックする必要があります。初診時に判断させていただきます。ED治療薬が無効の場合、陰茎海綿体注射療法があります。

3)薬剤性ED
 多種多様の薬がEDの原因になり得ます。

A)中枢神経に作用する薬剤:解熱・消炎鎮痛剤、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗精神病薬(メジャー・トラキライザー)、催眠鎮静薬などの向精神薬
B)末梢神経に作用する薬剤:鎮けい薬、抗コリン薬
C)循環器系に作用する薬剤:不整脈治療薬、利尿剤、降圧剤、血管拡張剤、脂質異常症治療剤
D)消化管に作用する薬剤:消化性潰瘍治療薬、抗コリン薬、鎮けい薬
など

4)混合性ED
 複数の要因によるEDのことで、EDの原因を一つに特定することは難しいことはしばしばあります。

セルフチェック1 IIEF-5

 気になる方はチェックしてみてください。

IIEF-5 ED問診票

セルフチェック2  EHS 硬さスケール

 気になる方はチェックしてみてください。
 0~4の5段階でEDの自己診断に利用する簡便な評価ツールです。

Q.あなたは自分の勃起硬度をどのように評価しますか?
グレード0:オチンチンが大きくならない。
グレード1:オチンチンが大きくなるが、硬くならない(コンニャク)。
グレード2:オチンチンが硬いが、挿入に十分ではない(ミカン)。
グレード3:挿入するには十分な硬さだが、完全には硬くはない(グレープフルーツ)。
グレード4:完全に硬く、硬直している(リンゴ)。

ED治療剤の概要

 EDの診療には健康保険が使えないことをご承知おきください。

 治療として最も一般的なものはお薬の内服でしょう。
 PDE5阻害剤は最も手軽に効果が得られやすく、なおかつ指示通りの内服であれば安全性も高いです。一般的なED治療といえば、まずはこの方法でしょう。間違ってはいけないのは、あくまでも勃起を手助けする薬であることです。性的刺激に反応しないと勃起は起きませんし、立ちっぱなしにする薬でもありません。性欲自体を高める媚薬でもありません。

 なぜこの薬が効くのでしょうか?
 「勃起のメカニズム」のところでも述べたように、cGMPが陰茎海綿体の血管を広げて勃起を促します。cGMPをこわし勃起を邪魔するのがPDE5で、PDE5の働きを弱めることができれば、勃起が促進されます。それがバイアグラなどのPDE5阻害剤です。邪魔ものを弱め、勃起の改善に働くのです。

副作用は、ほてり,頭痛、鼻閉、胃もたれなどです。これら副作用は軽微なことが多いです。

重要:PDE5を飲んではいけない人は以下の項目で1つでも当てはまる方です。

①過去にそのPDE5阻害剤で過敏症・アレルギー反応がでたことがある。
②硝酸剤あるいは一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等)を使用されている。
③心血管系障害のため性行為自体を医師に止められている(運動ですぐ息切れなど)。
④重度の肝機能障害がある。
⑤血圧が低すぎる(血圧が90/50mmHg 未満)
または高すぎる(うえ170mmHg、あるいは 下が100mmHg以上)
⑥脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ヵ月以内にあるかた。
⑦網膜色素変性症のかた。
⑧塩酸アミオダロン(経口剤)を内服している。

内服する上で守るべきこと

前回の服用から24時間あけてください。
内服は、1日1回だけ。
車の運転や機械の操作の際は、御注意下さい。
パートナーには、ちゃんと薬剤使用を伝えてください。
人にあげることも売ることも禁止です。他人から譲られたED薬での死亡事故があります。

ED治療剤 お薬の説明

 ED治療剤には3種類の薬があります。それぞれの説明を記載しました。あなたのライフスタイルに合う薬を見つけてください。お薬は院内処方となります。

A)シルデナフィル:世界初のED治療のファイザー社バイアグラと、そのジェネリックのことです。

【特徴や服用方法】
 効いてくるまでにおよそ1時間弱かかりますので、行為の1時間前には服用してください。効果持続時間は5時間程です。本剤は脂っこい食事により、成分の吸収が阻害され効果が減弱します。できるだけ空腹時に服用してください。
 もし空腹で何か召し上がりたいときは、あっさりした食事がよいです。内服して1時間ほど経過したら、その後に脂っこいものを食べても効果は落ちません。

B)バルデナフィル:バイエル社のレビトラです。ジェネリックは発売されていません。

【特徴や服用方法】
 効き始めまでの時間が20分程度と早いのが特徴です。効果持続時間は6-8時間程です。本剤は脂っこい食事により、成分の吸収が阻害され効果が減弱します。効果的を高めるには空腹時の服用がおすすめです。もし何か召し上がりたいときは、あっさりした食事がおすすめです。

C)タダラフィル:日本新薬社(以前はイーライリリー社)のシアリスと、そのジェネリックのことです。

【特徴や服用方法】
 効果持続時間が24時間から36時間とかなり長いのが特徴です。本剤は食事の影響がないという方がいますが、実際は他のPDE5阻害剤と同様で、空腹時に内服するほうが高い効果を得られます。

ED治療 陰茎海綿体注射

 陰茎海綿体注射は、神経の損傷などにより内服薬の効果が全く得られない方が対象となります。ご自身で注射を打つものです。電話でのご相談やご説明は一切していません。相談希望の方は受診をおねがいします。健康保険は使えません。